Pitchonomics
クラブ2026-08-12

ヴィッセル神戸の決算 — 売上高・スポンサー収入・営業利益(2025年度)

Pitchonomics 編集部

ヴィッセル神戸の2025年度の営業損失は1600万円である。同じ年の経常損失は30億3700万円だった。差を作っているのは営業外費用の30億7600万円で、売上高87億1100万円の35.3%にあたる。この割合は、2026-27シーズンのJ1に所属する20クラブで最も高い。

この定点記事は、開示された事実と編集部の見立てを分けて書く。

経営の全体像

ヴィッセル神戸の決算(単位: 百万円。▲は負の値)
項目2024年度2024-01-01〜2024-12-31・12か月2025年度2025-01-01〜2025-12-31・12か月
収入
売上高8,0678,711
スポンサー収入2,4393,025
入場料収入1,3091,441
物販収入9621,127
Jリーグ配分金678882
移籍補償金等収入11272
アカデミー関連収入259272
女子チーム関連収入00
その他収入2,4091,692
費用
売上原価6,1666,611
トップチーム人件費2,8103,186
トップチーム運営経費446650
試合関連経費(ホームゲーム開催費)438279
物販関連費636782
移籍関連費用465428
アカデミー関連経費331365
女子チーム関連経費00
その他売上原価1,039921
利益
販売費および一般管理費2,0492,116
営業利益(▲損失)▲148▲16
経常利益(▲損失)▲129▲3,037
当期純利益(▲損失)▲6▲734

前年からの変化

2024年度から2025年度にかけて、売上高が8.0%増え、同じ期間にスポンサー収入が24.0%増え、入場料収入が10.1%増え、トップチーム人件費が13.4%増え、営業利益が1億3200万円改善した。

前年からの変化(金額は百万円。収入・費用は率、利益は差分。▲は負の値)
指標2024年度2025年度変化
売上高8,0678,711+8.0%
スポンサー収入2,4393,025+24.0%
入場料収入1,3091,441+10.1%
トップチーム人件費2,8103,186+13.4%
営業利益(▲損失)▲148▲16+132

20クラブの中での位置

ヴィッセル神戸の売上高は20クラブ中4番目。

指標ごとの位置(金額は百万円。▲は負の値)
指標ヴィッセル神戸20クラブの中で
売上高8,71120クラブ中4番目
スポンサー収入3,02520クラブ中6番目
入場料収入1,44120クラブ中7番目
トップチーム人件費3,18620クラブ中3番目
営業利益(▲損失)▲1620クラブ中16番目
20クラブの売上高とヴィッセル神戸の位置20クラブの売上高を降順に並べた横棒グラフ。軸は0から200億円まで。ヴィッセル神戸は20クラブ中4番目の位置にある。050100150200浦和レッズ川崎フロンターレガンバ大阪ヴィッセル神戸サンフレッチェ広島鹿島アントラーズ横浜F・マリノスFC東京FC町田ゼルビア名古屋グランパスセレッソ大阪清水エスパルス柏レイソル東京ヴェルディ京都サンガF.C.ジェフユナイテッド千葉アビスパ福岡V・ファーレン長崎ファジアーノ岡山(5か月)水戸ホーリーホック
20クラブの売上高とヴィッセル神戸の位置(単位: 億円。軸は0から200億円まで)。 濃い1本がヴィッセル神戸である。同じ数字は上の表にある。
売上高に占める内訳の構成比(%)
項目ヴィッセル神戸20クラブ合計
スポンサー収入34.7%42.2%
入場料収入16.5%18.5%
物販収入12.9%9.7%
Jリーグ配分金10.1%6.3%
その他25.7%23.3%
ヴィッセル神戸と20クラブ合計の売上高の構成比ヴィッセル神戸と20クラブ合計の、売上高に占める内訳の構成比を並べた100%積み上げ横棒グラフ。ヴィッセル神戸はスポンサー収入34.7%、入場料収入16.5%、物販収入12.9%、Jリーグ配分金10.1%、その他25.7%。ヴィッセル神戸20クラブ合計
  • スポンサー収入
  • 入場料収入
  • 物販収入
  • Jリーグ配分金
  • その他
ヴィッセル神戸と20クラブ合計の売上高の構成比(100%積み上げ。項目の順序は全記事で同じ)。同じ数字は上の表にある。

順位は上の指標の値を降順に並べた結果であり、優劣の評価ではない。「その他」には移籍補償金等収入・アカデミー関連収入・女子チーム関連収入・その他収入が入る。決算期間が20クラブで揃っていない年であり、期間の長さが違うクラブの比率を並べている。

このクラブについて

事実① 損益は3段あり、神戸では段ごとに桁が変わる

順位表に載っているのは5つの指標である。神戸は2025年度、売上高87億1100万円が4番目、トップチーム人件費31億8600万円が3番目、スポンサー収入30億2500万円が6番目、入場料収入14億4100万円が7番目、営業利益は▲1600万円で16番目にある。前年度も同じあたりで、額の順位はほとんど動いていない。

営業利益には「売上高 −(売上原価+販管費)」という定義が付いている。本業の段だけを数えた値である。神戸の2025年度は、その段でほぼ均衡している——売上高87億1100万円に対し、売上原価66億1100万円と販売費および一般管理費21億1600万円を引いた残りが▲1600万円である。前年度の営業損失1億4800万円からは1億3200万円縮んでいる。

決算一覧はその下に2段を持っている。営業外収益5400万円と営業外費用30億7600万円を加減した経常損失が30億3700万円。さらに特別利益23億円と特別損失100万円を加減し、法人税および住民税等の▲400万円を経て、当期純損失が7億3400万円である。営業の段で1600万円だった損失が、経常の段では30億3700万円になり、最終の段では7億3400万円になる。

営業外費用の30億7600万円は、前年の2900万円から30億4700万円増えた。この増加額は、前年と決算期間の長さが揃う19クラブで最も大きい。特別利益23億円も、前年の2億円から21億円増えている。神戸の2025年度は、営業の段の外側で決算の形が決まった年である。

事実② 8項目の側では、Jリーグ配分金が20クラブで最も大きい

リーグが開示している収入は8項目ある。神戸の2025年度で20クラブの1番目に来るのは、スポンサー収入でも入場料収入でもなく、Jリーグ配分金の8億8200万円である。売上高に占める割合10.1%も20クラブで最も高く、2番目は東京ヴェルディの8.6%だった。前年の6億7800万円も20クラブの2番目で、前年からの増加額2億400万円は19クラブで最も大きい。

同じ年、その他収入は24億900万円から16億9200万円へ7億1700万円減った。スポンサー収入は24億3900万円から30億2500万円へ5億8600万円増えている。増収6億4400万円は、この2項目の差し引きにスポンサー収入の伸びが乗った形になっている。これらの増減額はリーグが公表している値ではなく、開示された2年度の値を引き算したものである。

費用の側では、試合関連経費が4億3800万円から2億7900万円へ1億5900万円減った。売上高に占める割合3.2%は20クラブで最も低い。トップチーム人件費は28億1000万円から31億8600万円へ3億7600万円増えている。

神戸の決算期間は2年度とも1月1日から12月31日までの12か月で、20クラブのうち12月決算は神戸を含めて3クラブである。所属は2年度ともJ1だった。

編集部の見立て — 営業利益は結果ではなく、1段目である

ここから先は編集部の見立てである。仮説として読んでほしい。

20クラブを同じ物差しで並べるとき、営業利益は使いやすい指標である。定義が「売上高 −(売上原価+販管費)」と示されていて、クラブの本業の部分だけを取り出せる。親記事の表も、この記事の順位表も、そこを採っている。

神戸の2025年度は、その採り方の外側が大きい年である。営業損失1600万円は20クラブの16番目で、額としては小さい。ところが経常損失は30億3700万円になる。営業と経常の差がこれだけ開いたクラブは、2025年度の20クラブに他に無い。そして最終の当期純損失は7億3400万円で、20クラブで最も大きい。

同じ年、営業損失が売上高の半分を超えたクラブが1つある。V・ファーレン長崎で、営業損失18億2100万円に対し、当期純利益は700万円だった。営業の段でほぼ均衡していたクラブが当期純損失7億3400万円で終え、営業の段で18億2100万円の損失を出していたクラブが当期純利益で終えている。

したがって編集部の見立ては、営業利益は決算の結果ではなく1段目である、というものである。神戸の2025年度は、その1段目と最終段が最も大きく食い違った例にあたる。

提言 — 営業外・特別の4項目にも、1行を

提言は、神戸にではなくリーグの開示の形に向ける。

リーグは各項目の定義を、表の項目名と注記の形でしか示していない。その注記が触れているのは、アカデミー事業を別法人へ移管している場合の扱い、物販の代理店委託、固定資産等に繰延資産を含めていること、端数処理、そして特定クラブの人件費の修正である。営業外収益・営業外費用・特別利益・特別損失の4項目には、注記も無い。

神戸の2025年度では、この4項目のうち2つが、売上高の35.3%と26.4%にあたる大きさを持っている。売上高の3分の1を超える費用項目に、名前以外の情報が無い。

提言は、この4項目にも、注記と同じ密度の1行を置いてほしい、というものである。新しい数字を集める必要はない。どういう性質のものをここに入れているかは、表を作る側では決まっている。それだけで、営業利益で並べた順位が、どこから先を測っていないかが読者に見える。

この提言への反論

反論はある。営業外・特別の項目は、その年限りの出来事を受ける場所であり、性質を1行で説明できるならそもそも本業の側に分類されているはずだ、という反論である。実際、この4項目は「本業でないもの」の受け皿として設計されている面がある。

だからこの提言は、内訳を出せというものでも、分類を変えろというものでもない。注記が触れている5点と同じ密度の1行を、残る4項目にも置いてほしいというだけである。

そして、自分の表にある不利な事実を1つ置いておく。神戸は営業の段でも2年度とも損失であり、2024年度が1億4800万円、2025年度が1600万円である。この記事は、営業の段が良好なクラブが営業外で崩れた、という話をしているのではない。

比べないこと

「営業外費用」「特別利益」に何が入るかは、定義が揃っているかを確かめられないので、リーグの外の数字とは比べていない。営業外・特別の扱いは会計基準そのものに直結する論点で、この記事の見立てに最も効く材料でもある。本媒体の方法はメソドロジーにまとめてある。

営業外費用30億7600万円と特別利益23億円の中身も、この記事は測っていない。何で構成されているのかは開示されておらず、分かるのは合計だけである。

Jリーグ配分金が売上高に占める割合で神戸に次ぐのは東京ヴェルディであり、営業損失が売上高の半分を超えながら当期純利益で年を終えたのはV・ファーレン長崎である。同じ物差しで並べた2クラブの記録はそれぞれの記事にあり、20クラブの一覧は親記事にある。

この記事の物差し(要約)

対象はヴィッセル神戸の2024年度(決算期間 2024-01-01〜2024-12-31・12か月)・2025年度(決算期間 2025-01-01〜2025-12-31・12か月)。

指標の値は、公益社団法人日本プロサッカーリーグが公表した決算一覧から取っている[1][2]。

次の指標は、上の表の数字を素直に読むと誤る。定義を要約せずそのまま置く。

物販収入
グッズ等の物販収入。代理店に委託販売しているクラブがあり、取扱高総額でのクラブ間比較はできない(資料注記3)
物販関連費
物販に係る原価・費用(注記3は収入側と同じ)
アカデミー関連収入
育成・普及事業の収入。別法人(NPO等)へ移管している場合は含まれない(資料注記2)
アカデミー関連経費
育成・普及事業の費用(注記2は収入側と同じ)
トップチーム人件費
トップチームの選手・監督・コーチ等の人件費。2024年度より移籍関連費用を内数から外出ししており、それ以前の年度と単純比較できない
移籍関連費用
選手獲得に伴う移籍金等。2024年度より人件費から外出し

各項目の定義は、Jリーグの開示資料(クラブ決算一覧・クラブ経営情報開示資料)の項目名と注記に対応させて Pitchonomics が整理したものである。リーグが定義として公表した文そのものではない。

各指標の定義と、20クラブを同じ物差しで並べるにあたっての条件は親記事にまとめてある。18クラブが増収し、営業損失クラブは4から5に増えた — 2026-27シーズンのJ1に所属する20クラブの決算を2年分並べた

出典・脚注
  1. [1]公益社団法人日本プロサッカーリーグ「2025年度 クラブ決算一覧」 · 2026-07-24 · 2026-08-04確認 リンク アーカイブ
  2. [2]公益社団法人日本プロサッカーリーグ「2024年度 クラブ決算一覧」 · 2025-07-29 · 2026-08-06確認 リンク アーカイブ