Pitchonomics
クラブ2026-08-12

V・ファーレン長崎の決算 — 売上高・スポンサー収入・営業利益(2025年度)

Pitchonomics 編集部

V・ファーレン長崎の2025年度の当期純利益は700万円である。同じ年の営業損失は18億2100万円だった。差を埋めているのは特別利益19億6000万円で、売上高33億3100万円の58.8%にあたる。この割合は、2026-27シーズンのJ1に所属する20クラブで最も高い。

この定点記事は、開示された事実と編集部の見立てを分けて書く。

経営の全体像

V・ファーレン長崎の決算(単位: 百万円。▲は負の値)
項目2024年度2024-01-01〜2024-12-31・12か月2025年度2025-01-01〜2025-12-31・12か月
収入
売上高2,3523,331
スポンサー収入1,2741,455
入場料収入5481,114
物販収入152158
Jリーグ配分金131129
移籍補償金等収入18208
アカデミー関連収入8079
女子チーム関連収入00
その他収入149188
費用
売上原価2,6364,145
トップチーム人件費1,5192,351
トップチーム運営経費215332
試合関連経費(ホームゲーム開催費)415956
物販関連費13973
移籍関連費用80128
アカデミー関連経費268305
女子チーム関連経費00
その他売上原価00
利益
販売費および一般管理費9411,007
営業利益(▲損失)▲1,225▲1,821
経常利益(▲損失)▲1,192▲1,815
当期純利益(▲損失)27

前年からの変化

2024年度から2025年度にかけて、売上高が41.6%増え、同じ期間にスポンサー収入が14.2%増え、入場料収入が103.3%増え、トップチーム人件費が54.8%増え、営業利益が5億9600万円減った。

前年からの変化(金額は百万円。収入・費用は率、利益は差分。▲は負の値)
指標2024年度2025年度変化
売上高2,3523,331+41.6%
スポンサー収入1,2741,455+14.2%
入場料収入5481,114+103.3%
トップチーム人件費1,5192,351+54.8%
営業利益(▲損失)▲1,225▲1,821▲596

20クラブの中での位置

V・ファーレン長崎の売上高は20クラブ中18番目。

指標ごとの位置(金額は百万円。▲は負の値)
指標V・ファーレン長崎20クラブの中で
売上高3,33120クラブ中18番目
スポンサー収入1,45520クラブ中17番目
入場料収入1,11420クラブ中12番目
トップチーム人件費2,35120クラブ中11番目
営業利益(▲損失)▲1,82120クラブ中20番目
20クラブの売上高とV・ファーレン長崎の位置20クラブの売上高を降順に並べた横棒グラフ。軸は0から200億円まで。V・ファーレン長崎は20クラブ中18番目の位置にある。050100150200浦和レッズ川崎フロンターレガンバ大阪ヴィッセル神戸サンフレッチェ広島鹿島アントラーズ横浜F・マリノスFC東京FC町田ゼルビア名古屋グランパスセレッソ大阪清水エスパルス柏レイソル東京ヴェルディ京都サンガF.C.ジェフユナイテッド千葉アビスパ福岡V・ファーレン長崎ファジアーノ岡山(5か月)水戸ホーリーホック
20クラブの売上高とV・ファーレン長崎の位置(単位: 億円。軸は0から200億円まで)。 濃い1本がV・ファーレン長崎である。同じ数字は上の表にある。
売上高に占める内訳の構成比(%)
項目V・ファーレン長崎20クラブ合計
スポンサー収入43.7%42.2%
入場料収入33.4%18.5%
物販収入4.7%9.7%
Jリーグ配分金3.9%6.3%
その他14.3%23.3%
V・ファーレン長崎と20クラブ合計の売上高の構成比V・ファーレン長崎と20クラブ合計の、売上高に占める内訳の構成比を並べた100%積み上げ横棒グラフ。V・ファーレン長崎はスポンサー収入43.7%、入場料収入33.4%、物販収入4.7%、Jリーグ配分金3.9%、その他14.3%。V・ファーレン長崎20クラブ合計
  • スポンサー収入
  • 入場料収入
  • 物販収入
  • Jリーグ配分金
  • その他
V・ファーレン長崎と20クラブ合計の売上高の構成比(100%積み上げ。項目の順序は全記事で同じ)。同じ数字は上の表にある。

順位は上の指標の値を降順に並べた結果であり、優劣の評価ではない。「その他」には移籍補償金等収入・アカデミー関連収入・女子チーム関連収入・その他収入が入る。決算期間が20クラブで揃っていない年であり、期間の長さが違うクラブの比率を並べている。

このクラブについて

事実① 費用の側だけで、売上高を超えている

順位表に載っているのは5つの指標である。長崎は2025年度、売上高33億3100万円が18番目、スポンサー収入14億5500万円が17番目、入場料収入11億1400万円が12番目、トップチーム人件費23億5100万円が11番目、営業利益は▲18億2100万円で20番目にある。

費用の側を見ると、売上原価が26億3600万円から41億4500万円へ15億900万円増えた。この増加額は、前年と決算期間の長さが揃う19クラブで最も大きい。そして41億4500万円は、売上高33億3100万円を8億1400万円上回っている。売上原価が売上高を超えているクラブは、2025年度の20クラブで長崎だけである。売上高に占める割合は124.4%になる。販売費および一般管理費10億700万円は、その上に乗る。

売上原価の内訳では、トップチーム人件費が8億3200万円、試合関連経費が5億4100万円、トップチーム運営経費が1億1700万円、移籍関連費用が4800万円、アカデミー関連経費が3700万円増え、物販関連費だけが6600万円減っている。これらの増減額はリーグが公表している値ではなく、開示された2年度の値を引き算したものである。

事実② ホームゲームの開催にかかる費用が、20クラブで最も大きい

試合関連経費には「ホームゲーム開催に係る費用」という定義が付いている。長崎のこの行は、2024年度が4億1500万円で20クラブの11番目、2025年度が9億5600万円で20クラブの1番目である。売上高に占める割合28.7%も20クラブで最も高い。増加額5億4100万円は19クラブで最も大きい。

売上規模が18番目のクラブが、この1項目では1番目に来ている。同じ年の入場料収入は11億1400万円で、試合関連経費はその85.8%にあたる。この割合が長崎より高いのは、水戸ホーリーホックの90.0%とFC町田ゼルビアの87.0%の2クラブである。なお試合関連経費と入場料収入は、リーグが収入と費用を対にして開示している4事業(アカデミー・物販・女子チーム・移籍)には入っていないので、この2行は引いていない。割合だけを出しており、その割合も公表値ではない。

長崎の決算期間は2年度とも1月1日から12月31日までの12か月で、所属は2年度ともJ2である。2026-27シーズンがJ1での1年目にあたる。

事実③ 損益の3段目で、ほぼゼロに戻る

決算一覧は営業利益の下に2段を持っている。長崎の2025年度は、営業損失18億2100万円に営業外収益900万円と営業外費用300万円を加減した経常損失が18億1500万円。そこに特別利益19億6000万円と特別損失1億2700万円を加減した税引前当期純利益が1800万円で、法人税および住民税等1100万円を引いた当期純利益が700万円である。

特別利益19億6000万円は、額としては20クラブの2番目で、ヴィッセル神戸の23億円が1番目である。売上高に占める割合58.8%は20クラブで最も高い。前年度の12億円は、その年の20クラブで最も大きい額だった。2年度とも、この項目が営業の段の損失とほぼ同じ大きさで立っている。

編集部の見立て — 収入の順位から読み始めると、この決算は説明が付かない

ここから先は編集部の見立てである。仮説として読んでほしい。

20クラブを売上高で並べると、長崎は18番目である。収入8項目のどれを見ても、上位に来る行は無い。収入の側から読むかぎり、長崎は表の下のほうにいるクラブにすぎない。

費用の側へ移ると、並びが変わる。試合関連経費が20クラブで1番目、売上原価の対売上高比が1番目、トップチーム人件費の対売上高比も1番目である。そして売上原価だけで売上高を超えている。この形になると、収入の側の順位からは何も導けない。売上高が18番目であることは、この決算について何も説明しない。

そして費用の側から読んでも、最後にもう一度止まる。営業の段の損失18億2100万円は、特別利益19億6000万円でほぼ打ち消される。決算一覧がこの項目について示しているのは金額だけで、注記も付いていない。

したがって編集部の見立ては、長崎の2025年度は、収入の順位から読み始めると最後まで説明が付かない決算である、というものである。読む順序を変えないと、この表は開かない。

提言 — 読者へ。売上原価と売上高を、先に比べてほしい

提言の宛先は、リーグでも長崎でもなく、この表を読む人である。決算を読むとき、売上高の順位から読み始めないでほしい。

具体的には、次の順で見るとよい。①売上原価と売上高を比べる。長崎の2025年度なら、費用の側だけで収入を8億1400万円超えている。②超えていれば、費用の内訳から読む。8項目のうちどれが動いたかが分かる。長崎なら人件費と試合関連経費である。③そのうえで収入を見る。このとき初めて、売上高18番目という順位が意味を持つ。

新しいデータは要らない。売上原価も売上高も同じ表にある。読む順序を変えるだけである。

この提言への反論

反論はある。売上原価が売上高を上回るのは例外的な形であり、20クラブのうち1クラブのために全部の読み方を変えるのは過剰だ、という反論である。実際、残る19クラブでは売上原価が売上高を下回っていて、収入から読んでも順番に説明が付く。

だからこの提言は、収入の側を見るなというものではない。最初の1手だけを費用の側に置いてほしい、というだけである。その1手で、19クラブは何も変わらず、1クラブだけ読み方が切り替わる。

自分の表にある不利な事実も置いておく。この提言に従って費用の側から読んでも、長崎の決算は最後の段で止まる。特別利益19億6000万円が何であるかは、費用の内訳をいくら読んでも出てこない。読む順序を変えれば全部が読めるようになる、という話ではない。そして長崎の資本(純資産)の部の合計は3300万円で、売上高に占める割合1.0%は20クラブで最も低い。当期純利益700万円は、その上に乗っている。

比べないこと

「特別利益」「売上原価」に何が入るかは、定義が揃っているかを確かめられないので、リーグの外の数字とは比べていない。リーグは各項目の定義を、表の項目名と注記の形でしか示していない。営業の段で損失を出しながら最終の段で当期純利益を残す形は、リーグのライセンス制度が何を審査するかと直結する論点で、この記事の見立てに最も効く材料でもある。本媒体の方法はメソドロジーにまとめてある。

特別利益19億6000万円の中身も、この記事は測っていない。何で構成されているのかは開示されておらず、分かるのは合計だけである。ホームゲームが何試合あったのかも、決算一覧には載っていない。

特別利益の額が2025年度に20クラブで最も大きいのはヴィッセル神戸であり、入場料収入に対する試合関連経費の割合で長崎より高いのは水戸ホーリーホックとFC町田ゼルビアである。同じ物差しで並べた各クラブの記録はそれぞれの記事にあり、20クラブの一覧は親記事にある。

この記事の物差し(要約)

対象はV・ファーレン長崎の2024年度(決算期間 2024-01-01〜2024-12-31・12か月)・2025年度(決算期間 2025-01-01〜2025-12-31・12か月)。

指標の値は、公益社団法人日本プロサッカーリーグが公表した決算一覧から取っている[1][2]。

次の指標は、上の表の数字を素直に読むと誤る。定義を要約せずそのまま置く。

物販収入
グッズ等の物販収入。代理店に委託販売しているクラブがあり、取扱高総額でのクラブ間比較はできない(資料注記3)
物販関連費
物販に係る原価・費用(注記3は収入側と同じ)
アカデミー関連収入
育成・普及事業の収入。別法人(NPO等)へ移管している場合は含まれない(資料注記2)
アカデミー関連経費
育成・普及事業の費用(注記2は収入側と同じ)
トップチーム人件費
トップチームの選手・監督・コーチ等の人件費。2024年度より移籍関連費用を内数から外出ししており、それ以前の年度と単純比較できない
移籍関連費用
選手獲得に伴う移籍金等。2024年度より人件費から外出し

各項目の定義は、Jリーグの開示資料(クラブ決算一覧・クラブ経営情報開示資料)の項目名と注記に対応させて Pitchonomics が整理したものである。リーグが定義として公表した文そのものではない。

各指標の定義と、20クラブを同じ物差しで並べるにあたっての条件は親記事にまとめてある。18クラブが増収し、営業損失クラブは4から5に増えた — 2026-27シーズンのJ1に所属する20クラブの決算を2年分並べた

出典・脚注
  1. [1]公益社団法人日本プロサッカーリーグ「2025年度 クラブ決算一覧」 · 2026-07-24 · 2026-08-04確認 リンク アーカイブ
  2. [2]公益社団法人日本プロサッカーリーグ「2024年度 クラブ決算一覧」 · 2025-07-29 · 2026-08-06確認 リンク アーカイブ