清水エスパルスの決算 — 売上高・スポンサー収入・営業利益(2025年度)
Jリーグが開示した2024年度の決算で、アカデミー(育成・普及)事業の収入が同じ事業の経費を上回っていたクラブは、2026-27シーズンのJ1に所属する20クラブで清水エスパルスただ1つである。収入3億5800万円に対して経費2億9800万円、差は6000万円だった。翌2025年度、清水はJ1へ上がり、収入4億700万円に対して経費6億1600万円になる。差は逆を向き、2億900万円になっている。
この定点記事は、開示された事実と編集部の見立てを分けて書く。
経営の全体像
| 項目 | 2024年度2024-02-01〜2025-01-31・12か月 | 2025年度2025-02-01〜2026-01-31・12か月 |
|---|---|---|
| 収入 | ||
| 売上高 | 5,003 | 5,353 |
| スポンサー収入 | 2,510 | 2,672 |
| 入場料収入 | 941 | 1,128 |
| 物販収入 | 233 | 310 |
| Jリーグ配分金 | 135 | 327 |
| 移籍補償金等収入 | 514 | 159 |
| アカデミー関連収入 | 358 | 407 |
| 女子チーム関連収入 | 0 | 0 |
| その他収入 | 312 | 350 |
| 費用 | ||
| 売上原価 | 3,664 | 4,504 |
| トップチーム人件費 | 2,157 | 1,878 |
| トップチーム運営経費 | 426 | 268 |
| 試合関連経費(ホームゲーム開催費) | 351 | 480 |
| 物販関連費 | 36 | 42 |
| 移籍関連費用 | 396 | 632 |
| アカデミー関連経費 | 298 | 616 |
| 女子チーム関連経費 | 0 | 0 |
| その他売上原価 | 0 | 588 |
| 利益 | ||
| 販売費および一般管理費 | 1,271 | 813 |
| 営業利益(▲損失) | 68 | 36 |
| 経常利益(▲損失) | 79 | 38 |
| 当期純利益(▲損失) | 26 | 34 |
前年からの変化
2024年度から2025年度にかけて、売上高が7.0%増え、同じ期間にスポンサー収入が6.5%増え、入場料収入が19.9%増え、トップチーム人件費が12.9%減り、営業利益が3200万円減った。
| 指標 | 2024年度 | 2025年度 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,003 | 5,353 | +7.0% |
| スポンサー収入 | 2,510 | 2,672 | +6.5% |
| 入場料収入 | 941 | 1,128 | +19.9% |
| トップチーム人件費 | 2,157 | 1,878 | ▲12.9% |
| 営業利益(▲損失) | 68 | 36 | ▲32 |
20クラブの中での位置
清水エスパルスの売上高は20クラブ中12番目。
| 指標 | 清水エスパルス | 20クラブの中で |
|---|---|---|
| 売上高 | 5,353 | 20クラブ中12番目 |
| スポンサー収入 | 2,672 | 20クラブ中12番目 |
| 入場料収入 | 1,128 | 20クラブ中11番目 |
| トップチーム人件費 | 1,878 | 20クラブ中14番目 |
| 営業利益(▲損失) | 36 | 20クラブ中13番目 |
| 項目 | 清水エスパルス | 20クラブ合計 |
|---|---|---|
| スポンサー収入 | 49.9% | 42.2% |
| 入場料収入 | 21.1% | 18.5% |
| 物販収入 | 5.8% | 9.7% |
| Jリーグ配分金 | 6.1% | 6.3% |
| その他 | 17.1% | 23.3% |
- スポンサー収入
- 入場料収入
- 物販収入
- Jリーグ配分金
- その他
順位は上の指標の値を降順に並べた結果であり、優劣の評価ではない。「その他」には移籍補償金等収入・アカデミー関連収入・女子チーム関連収入・その他収入が入る。決算期間が20クラブで揃っていない年であり、期間の長さが違うクラブの比率を並べている。
このクラブについて
事実① 順位表に載っていない8番目の項目
順位表に載っているのは5つの指標だけである。売上高・スポンサー収入・入場料収入・トップチーム人件費・営業利益。清水はこの5指標で、2024年度・2025年度を通じて9番目から14番目の間にいる。売上高は2年度とも12番目で、順位が変わっていない。
だが、リーグが開示している収入は8項目ある。物販収入・Jリーグ配分金・移籍補償金等収入・アカデミー関連収入・女子チーム関連収入・その他収入が、順位表の5指標の外にある。8項目の合計は売上高に一致する(端数処理により、2年度ともそれぞれ1クラブで100万円ずれる。資料自身が端数処理の影響を注記している)。
この8項目を売上高に対する割合で並べ直すと、清水は1つだけ20クラブの1番目に来る。アカデミー関連収入である。2024年度が3億5800万円で7.2%、2025年度が4億700万円で7.6%。2年度とも20クラブで最も高い。2番目はどちらもFC東京で、6.7%と7.0%だった(2024年度は東京ヴェルディも、小数第1位までなら同じ6.7%になる)。額そのものでも清水は2年度とも2番目である。売上高が12番目のクラブが、この1項目では2番目にいる。
費用の側も同じ位置にある。2025年度のアカデミー関連経費6億1600万円は、売上高の11.5%にあたり、これも20クラブで最も高い。売上原価に占める割合13.7%も最も高い。2024年度の経費は2億9800万円・6.0%で、20クラブの8番目だった。1年で8番目から1番目へ動いている。リードに置いた収入と経費の差は公表値ではなく、開示された2つの値の引き算である。
なお、この割合の順位は20クラブを母数として数えている。1クラブ(ファジアーノ岡山)は2025年度が5か月決算だが、この項目では下から3番目にあたり、上位の順位には効いていない。
事実② 差が逆を向いた年に、何が並んでいたか
2025年度のアカデミー関連経費は、前年から3億1800万円増えた。106.7%増である。この伸び率を計算できるのは、前年度の経費が0円でない17クラブになる。その17クラブの中で106.7%は最も大きく、2番目は柏レイソルの26.8%だった。4倍近い開きがある。収入の側も3億5800万円から4億700万円へ13.7%増えているが、経費の増え方には届いていない。
同じ年、清水の売上高は50億300万円から53億5300万円へ3億5000万円増えた。Jリーグ配分金は1億3500万円から3億2700万円へ142.2%増えた。入場料収入は9億4100万円から11億2800万円へ19.9%増えた。トップチーム人件費は21億5700万円から18億7800万円へ2億7900万円減り、売上高に対する割合は43.1%から35.1%へ8.0ポイント下がった。営業利益は6800万円から3600万円になった。
清水の決算期間は2年度とも12か月(2月1日〜翌1月31日)である。所属は2024年度がJ2、2025年度がJ1だった。前年比がカテゴリーをまたぐのは、20クラブで清水とファジアーノ岡山の2クラブだけである。清水の売上高7.0%増は、J1どうしで比べた7.0%増と同じ意味を持たない。
ここで1つ、分けられないことがある。2025年度は売上原価の内訳そのものが動いている。その他売上原価が0円から5億8800万円になり、販売費および一般管理費は12億7100万円から8億1300万円へ4億5800万円減った。清水については、内訳8項目の合計が2年度とも売上原価に一致している。表としては閉じている。だが、アカデミー関連経費の増加のうち、どこまでが事業の規模の変化で、どこまでが科目の置き方の変更かは、この資料からは分けられない。分けられないので、分けずに書く。
もう1つ。アカデミー関連収入は、移籍補償金等収入とは別の行である。清水の移籍補償金等収入は2024年度が5億1400万円で20クラブの6番目、2025年度が1億5900万円で18番目だった。この金額が何件の移籍で構成されているのかは開示されておらず、分かるのは合算だけである。誰が動いたかも、リーグの決算一覧には載っていない。
編集部の見立て
ここから先は編集部の見立てである。仮説として読んでほしい。
この記事はアカデミーを、選手を育てる場としてではなく、収入と費用を持つ1つの事業として見ている。その視点に立つと、20クラブの表はほぼ同じ形をしている——2025年度、アカデミー関連収入が経費を上回ったクラブは0である。収入も経費も0円の2クラブを除く18クラブは、すべて経費が収入を超えている。2024年度も、上回っていたのは清水だけだった。
清水で収入が経費を上回っていたのは、経費を抑えていたからではない。2024年度の経費2億9800万円は20クラブの8番目で、上から半分に入っている。差を作っていたのは収入の側である。3億5800万円は20クラブの2番目で、売上高に対する割合では1番目だった。
そして2025年度、動いたのは費用の側だけだった。収入は7.6%で1番目のままである。経費が2番目まで上がり、差は逆を向いた。ここで言えることが1つある。これは1年で戻る種類の差ではない。2024年度の6000万円の差は、収入3億5800万円・経費2億9800万円という水準の上に立っていた。2025年度の経費6億1600万円は、その2倍を超えている。収入が2025年度と同じ13.7%の伸びを続けても、経費が動かなければ、収入が経費を上回るまでに数年かかる計算になる。J1昇格の年に、この2行は水準ごと切り替わった。
提言 — 注記を、クラブ単位に落としてほしい
提言は清水にではなく、リーグの開示の形に向ける。
資料の注記には「上記数値はクラブ運営法人単体の数値であるため、アカデミー(育成・普及)事業を、クラブ運営法人と直接関係のあるNPO法人や一般社団法人に移管している場合には、アカデミー関連収入及び費用が上記数値に含まれないことがある。」とある。だが、どのクラブが該当するかは書かれていない。2025年度にアカデミー関連収入も経費も0円だったのは横浜F・マリノスとセレッソ大阪の2クラブだが、この0円が「移管していて表に出ていない」のか「そう計上していない」のかを、読者は資料から区別できない。
該当するクラブに印を1つ付けてほしい。新しい数字を集める必要はない。注記が既に全クラブに向けて述べていることを、クラブ単位に落とすだけである。それだけで、この項目で20クラブを比べてよい範囲が読者に見える。この記事が「20クラブで1番目」「20クラブでただ1つ」と書いた部分は、いま、その範囲が確かめられないまま立っている。
この提言への反論
この提言には反論がある。法人をどう分けるかは各クラブの設計であり、リーグが印を付ければ、移管しているクラブが数字を隠しているように読まれかねない、という反論である。実際そう読まれる余地はある。
だから印は、評価ではなく範囲の表示として置く。注記は既に「含まれないことがある」と全クラブに向けて書かれていて、印はその宛先を特定するだけであり、新しい判断を足さない。むしろ印が無い現状のほうが、0円の2クラブに読者の推測を呼び込んでいる。
比べないこと
「アカデミー関連収入」に何が入るかは、定義が揃っているかを確かめられないので、リーグの外の数字とは比べていない。リーグは各項目の定義を、表の項目名と注記の形でしか示していない。育成事業を単体で、収入が経費を上回る形にできるのか、できるとすればどの規模でかは、この記事の見立てに最も効く論点である。本媒体の方法はメソドロジーにまとめてある。
アカデミー関連収入が売上高に占める比率で清水に次ぐのはFC東京であり、2025年度にこの事業の収入・経費がともに0円だったのは横浜F・マリノスとセレッソ大阪である。同じ物差しで並べた各クラブの記録はそれぞれの記事にあり、20クラブの一覧は親記事にある。
この記事の物差し(要約)
対象は清水エスパルスの2024年度(決算期間 2024-02-01〜2025-01-31・12か月)・2025年度(決算期間 2025-02-01〜2026-01-31・12か月)。
指標の値は、公益社団法人日本プロサッカーリーグが公表した決算一覧から取っている[1][2]。
次の指標は、上の表の数字を素直に読むと誤る。定義を要約せずそのまま置く。
- 物販収入
- グッズ等の物販収入。代理店に委託販売しているクラブがあり、取扱高総額でのクラブ間比較はできない(資料注記3)
- 物販関連費
- 物販に係る原価・費用(注記3は収入側と同じ)
- アカデミー関連収入
- 育成・普及事業の収入。別法人(NPO等)へ移管している場合は含まれない(資料注記2)
- アカデミー関連経費
- 育成・普及事業の費用(注記2は収入側と同じ)
- トップチーム人件費
- トップチームの選手・監督・コーチ等の人件費。2024年度より移籍関連費用を内数から外出ししており、それ以前の年度と単純比較できない
- 移籍関連費用
- 選手獲得に伴う移籍金等。2024年度より人件費から外出し
各項目の定義は、Jリーグの開示資料(クラブ決算一覧・クラブ経営情報開示資料)の項目名と注記に対応させて Pitchonomics が整理したものである。リーグが定義として公表した文そのものではない。
各指標の定義と、20クラブを同じ物差しで並べるにあたっての条件は親記事にまとめてある。18クラブが増収し、営業損失クラブは4から5に増えた — 2026-27シーズンのJ1に所属する20クラブの決算を2年分並べた